アイデア出しの時に重要な「可視化」作業
前回の下記の記事で、新しいアイデアを出す時の「生みの苦しみ」について書きましたが、その時にどのような方法で、その苦しいアイデア出しを成功させることが出来たのか、その方法を、今回の記事で書きたいと思います。
アイデアを出す時に、まず、一番に気を付けた点は、紙や鉛筆を使って書き出す、あるいは、PCのソフトを使って書き出すなどして、必ず「可視化」をすることです。当時、日中は、「なぜを5回繰り返す」という文化で有名な企業が作った大学の情報部門で仕事をしておりまして、その仕事の中で「可視化」の効果は実感していましたので、その点に気をつけながらアイデア出しを行っていきました。
可視化の良い点は、可視化した図や文章を見ながら考えることに集中できるので、脳の負担が少なく、その分、より多くの事柄、あるいは、より深い内容について考えられるようになる点です。
可視化をせずに、頭の中だけで考えようとすると、思い描いた図や文章を頭の中に記憶し、その上で考える作業をする形になります。このようにしてしまうと、頭の負荷が非常に高くなり疲れやすく、「思いついたことを忘れてしまったらどうしよう」と思いながら考えることになり、不安な気持ちが出てきてしまうので、あまり、上手くいきません。
この「可視化」を行いながら、数百~千くらいのアイデアをひたすら出していき、短期間で成果を出すことができて、かつ、テーマの将来の広がりがある研究テーマを1つ選び、そのテーマに賭けることにしました。
制約条件・前提条件を1つ1つ外して考えていくことでアイデアが生まれる
次に、「現在までの経験にとらわれずに考える」ことを重視しました。一般の仕事の世界では、制約条件、つまり、その仕事の前提条件があって、その条件の範囲で仕事をすすめるというやり方をすることが多いと思います。
例えば、情報システムの企画を考える時には、情報化する業務の範囲、情報システムを使用する利用者の種類と人数、予算、開発期間などの制約条件・前提条件を明確化し、その範囲で情報システムの企画を作っていきます。
制約条件を設けるのは、条件を付けずに範囲を広げすぎると発散しすぎて仕事が進まなくなってしまうからです。社会人になって仕事をし始めると、先輩や上司にこのようなやり方を教え込まれるので、それが習慣化されてしまいます。
これが、キャリアを積んでいく過程で、頭が固くなり、新しいことにチェレンジしなくなる根本的な要因になる場合もあると思います。そこから、解き放たれて、自由に考える思考形態を持てるかどうかが、キャリアを継続してよい方向に発展させられるかの鍵だと思います。
制約条件・前提情報を設定することで安心してしまい、広い範囲で物事を考えることが出来ないようになってしまうのです。私自身も、気づかないうちに、そのような状態に陥っていたように思います。それが良いことだと思い込んでいたのです。
しかしながら、研究の場合は、そのような思考形態では、何も実現できません。研究は、基本的には、誰もやっていないアイデアや方法の発見が必要なので、範囲を狭めて考えていく思考形態では、到底、上手くいきません。
その逆で、制約条件・前提条件を一つずつ外して、対象範囲を広げて考えていく思考形態を身につけることで、新しいアイデアが生まれる可能性が出てくるのです。当時は、このことを知っていたわけではありませんが、アイデア出しが行き詰る過程で試行錯誤している時に、このようなことを体感しました。
例えば、あるインターネットのサービスを考える時に、初めは、そのサービスを利用する利用者を20歳代の若者と設定して限定して考えいき、一通りのサービスの内容が決まってきた段階で、30歳代、40歳代、場合によっては、80歳代の人がそのサービスを利用する場合は、どのようになるのだろうかと考えてみるのです。
20歳代と30歳代の場合は、それ程違わないと思いますが、80歳代になると、大きく変わると思いますので、思ってもみない視点・発想が生まれることになり、それが新しいサービス内容につながっていくことがあり得ます。
研究以外の通常の仕事の場面でも、行き詰った時には、意識的に、このような思考形態をとることが出来ると、解決の糸口をつかみやすくなります。凝り固まった自分の考え方・発想が解きほぐされて、新しい発想が出てくるのです。
研究だとこのような発想が必須になり、それが、私にとって非常に良いトレーニングになりました。
「順列組み合わせの変更」によるアイデアの創出
それから、経営コンサルタントの堀紘一氏の本(本のタイトルは忘れました・・)を読んでいた時に、新しいアイデアも、結局は、「既存の知識・アイデア・手法などを組み合わせる、あるいは、使用する順番を変えることなどによって生まれる」ことが多いという話を聞いて、このような思考形態も、アイデアの糸口をつかむのに大きくが出来ました。
全く新しいアイデアをいきなり生み出せるかというと、そういたことは稀で、順番や組み合わせを変えるという、いわば、システマティックなアイデア出しのやり方をすることで、候補となるアイデアの数が飛躍的に増えて、あらゆる角度から視点で物事をみることができるようになります。
当時は、今回の記事で紹介した3つの方法を明確に意識していた訳ではありませんが、結果的に、この3つの方法を組み合わせたようなやり方を無意識に行ったことで、アイデアを出し、研究テーマを設定することができたように思います。
当時からこれらの思考方法を知っていて、使いこなせるような状況だったら、もっと、短い時間で研究テーマを決めることが出来たと思います。
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