スポーツ選手のキャリアパスの選択肢は少ない
前回の記事で、プロスポーツ選手の引退後のキャリアパスに関する記事を掲載しました。
日本の場合、競技レベルのスポーツを仕事として高校や大学の卒業後も続けることは、著しく困難なことです。実業団の選手になるか、プロスポーツ市場が確立されている競技種目の場合は、プロ選手として活躍する道がありますが、それくらいしかありません。
それ以外に競技を続けるには、公務員や企業などの組織でスポーツとは違う仕事を持ち、その傍らで、趣味の延長線上のような位置付けで、自主的な活動として行うしかありません。
その場合、仕事とは全く関係ないので、有給休暇を使って大会等に参加し、費用は自費負担となる。職場に理解があれば、何とか有給もとれますが、そうでない職場の場合には、非常につらい立場での活動となります。
その為、日本の場合、スポーツ選手は、高校や大学を卒業して社会人となる段階で辞めてしまい、一社会人として会社に就職したりして仕事を始めるケースが非常に多いです。
その理由として、実業団選手やプロ選手になって、現役を終えた後のキャリアパスの選択肢が少なく、選手個人で開拓していく必要がある場合が多く、不安を感じてトップレベルの選手でも、大学卒業の時点で辞めてしまう場合も多いです。安定した就職を選ぶのです。
企業側の視点でみると、例えば、30歳を越えて一般の社会経験がない元選手を雇い入れるのであれば、新卒の学生を雇い入れて教育した方が良いと考える場合が多いと思います。スポーツ選手としての経験をキャリアとして評価してくれる企業は、ごく少数派であるのが現実です。
(元)スポーツ選手であることの強み
このように考えてしまうと(元)スポーツ選手に、良い点がないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。沢山の良い点があります。
例えば、以下のような点をあげることができます。
- 目標を設定し、それを達成するための努力が当たり前となっている。
- 長期に渡る継続的活動の習慣が身についている。
- 良い結果が出ない中でも試行錯誤して努力する姿勢が当たり前になっている。
- 団体競技の場合は、一定水準のコミュニケーション能力も身についている。
- 個人競技の場合は、結果に対する責任感が強い。
などです。他にも、探せばあげることが出来る点は、沢山あると思います。
特に、どんな競技種目の選手でも、ある一定水準の成果を残した人の場合は、「目標達成の為に頑張る姿勢」や「継続的努力の習慣化」などは、かなりの度合いで身についていると言えると思います。社会人として仕事していく上では非常に大切なものであるので、もっと評価されて良いと個人的には思っています。
また、(3)で記載した、「良い結果が出ない中でも試行錯誤して努力する姿勢」などは、今の多くの若者には欠けていると言われている点ですので、指導的立場に立つ人からすると、指導しがいのある非常に好ましい性質と捉えて貰えるでしょう。
スポーツ人材の活用を促進する会社
このようなスポーツ経験のある人を企業の人材として活用して貰うことを事業目的とする会社も生まれてきています。その一例として、スポーツ人材に特化した人材紹介会社があります。私自身は存在を知らなかったですが、市場規模は、まだ、それ程大きくはないですが、今後、大きくなる可能性もあると思います。
現在の世の中の会社では、会社を発展させて強くするために、多様性(ダイバーシティー)を重視する方向にあり、その多様な人材のパターンの1つとして、「スポーツ人材」を位置づけることも可能であると思うからです。
下記の記事のように、スポーツ庁の方では、スポーツ経営人材に関する動きもあるようです。
また、スポーツ人材に特化した人材紹介会社では、例えば、以下のような事業を行っているようです。
・体育会学生に限定した合同就職セミナー
・スポーツ系人材の企業への紹介事業
・スポーツ系人材を採用したい会社への採用業務のコンサルティング
・各種イベントへのスポーツ系学生の動員
また、会社によっては、実業団やプロとしての活動を終えた後のキャリアサポートなどを行う場合もあるようです。
スポーツ系の学生の皆さんで、スポーツに関連する仕事を志向している人にとっては、選択肢の一つになるかもしれないと思い、その存在を紹介させて頂きました。