就活の段階では正社員の仕事はよく分からない
学生時代にアルバイトを経験していると、正社員の仕事と同じような仕事をしていると錯覚してしまう場合もあると思います。世の中の仕組みがよく分からない段階なので、無理もありません。正社員の立場でも、キャリアの浅い段階では、自分の経験した範囲の仕事しか基本的には分からないので、全部の仕事を分かったように勘違いしてしまうのと同じことです。
それゆえ、就活の段階では、「やりたい仕事」というのは、自分の描いているイメージの範囲で、やりたいと思っているものにすぎません。経験がないので、本当の所はよく分からないのです。
その点を押さえておくと良いと思います。入社後に、多くの人は、自分が思い描いていた仕事とは違う仕事だったと思うことがあると思いますが、それは特別なことではなく、むしろ普通のことだと思います。
まだ、自分に仕事をこなす力がないので、そのように言うことでいい訳をしている側面もあるのだと思います。自分も同じように思ったことがありますので、気持ちは、よく分かります。
就活の段階やキャリアが浅い段階ではやりたい仕事に拘り過ぎない方がよい
結局、仕事の面白さは、自分に実力がついてくるまでよく分からないのが本当の所だと思いますので、就活の段階で、「やりたい仕事」でないといけないという固定観念を持ちすぎない方がよいと思います。
特に危険なのは、自分がやりたいと思っている仕事が自分に向いていない場合には、面接で落選が続く可能性が高くなる点です。面接官は、沢山の人を見た経験がありますので、明らかに向いてなさそうな人は、ある程度分かるものです。
就活の本番期間は、業種や職種にもよりますが、3~7月ぐらいまでの期間がピークなので、この短い期間で内定を取って行く必要があります。条件のよくない小さな会社は、それ以降も沢山募集が出ますが、皆が行きたがる大手の会社は、この時期に集中します。
この期間に自分の想いに拘り過ぎると、会社側から向いていないと思われる業種・職種しか受けておらずに落選が続いた場合には、良い会社に入るチャンスを逃してしまいます。これは非常に大きな問題です。
もちろん、その時点で「やりたい仕事」と思っている業種・職種を受けていくのは、全く問題ありませんが、それ以外の興味がないと思い込んでいる業種・職種を完全に無視してしまうやり方は、上手く行かなかった時にリスクヘッジが出来ていないので、大きなダメージを受けてしまうことになります。
したがいまして、指導学生の皆さんには、2つくらいの業種の会社を受けていって、事務系の職種を希望する場合には、総合職と一般職の両方を受けていくことをお勧めしています。また、それ以外に何かしらの特徴のある会社で気になった会社があれば、業種に縛られずに受けてみた方がよいということもお伝えします。
このようにすると、受ける会社の数は増えますが、ベースとなる業種・職種を沢山受ける一方で、それ以外の会社もある程度受ける形になるので、偏った受けかたになりません。就活の負荷は高くなってしまいますが、失敗のリスクを減らすやり方ですので、このやり方をお勧めしています。
内定を複数貰った場合はどうするか?
このような戦略で進めていって、人によっては内定を複数貰う人も出てきます。私の指導方針としては、同じ業種や職種で、大手グループの会社(グループのトップ企業・系列の子会社)からの内定が出ている場合は、その会社を優先した方がよいとお伝えしています。
色々な就活に関する情報を見た時に、大手信仰はよくないという話もよく聞きますが、それは、選考を受けていく場合の戦略の話であり、大手グループから内定を得た場合は、よほどのことがない限り、最初の就職先としては、そこをお勧めします。
日本の大手の会社の場合は、ある一定の研修などを通じて人材育成を必ず行います。そこで、社会人の最低限のイロハを学ぶことが出来ます。また、その会社で行き詰ってしまっても、大手の会社に入社した実績があれば、その次のチャンスが拾いやすい部分があります。
日本社会に限らず、どの社会でも基本的には、実績主義なので、最初に世の中に全く知られていない会社に入るよりは、確実に選択肢が増えるのです。
また、最終的に中小規模の小さな会社で働くようになったとしても、大手の会社が取引先になることもあると思いますので、その大手の組織的な仕事のやり方を経験していないと、上手く取引が出来ないことになりかねません。
中小規模の会社は、後からの転職で入ることが可能な場合が多いので、新卒の段階では、可能な限り規模の大きな会社に入っていくのが得策です。
迷うのは、違う業種や職種の仕事で複数の内定を頂いている場合です。これは、私もアドバイスに非常に迷います。はじめから希望していた業種や職種の会社から内定をもらっている場合は、それが第一候補となりますが、その会社が中小規模の会社であり、別の内定先が希望していなかった業種や職種で、大手企業だった場合は、特に判断に迷います。
とはいっても、私が入社する訳ではないので、最終判断は本人しか行えません。その際、私としては、色々な質問をして、最初から希望していた業種や職種が本当に心の底から希望しているのかを確かめることがあります。特に適性がありそうには思えない場合は、慎重に確認をしていきます。
一番分かりやすい例は、ベンチャー企業のように何もない所から自分で動いていかないと仕事にならない企業へ入社を希望している学生が、普段の様子からそのような働き方が出来るとは思えないと判断できる場合です。
大企業と中小企業の違いを説明して、それでも中小企業へ行くという意思が固いようであれば、それを最終的には応援する形にします。