IT業界ではキーワードに乗ってビジネスを創出することがある
IT、ICTなどの用語は、すべて特定のテクノロジーを表している訳ではなく、概念を表しているものであり、特別に新しいテクノロジーという訳ではありません。しかしながら、分かりやすい表現となっているので、人々の記憶に残りやすく、世の中を変える流れを作り出すために必要な宣伝効果は非常に大きなものとなっていきます。
そのため、IT業界では、このようなキーワードに乗ってビジネスを創出することがしばしばあります。逆にいうと、これらのビジネスの顧客となる側の人達にとっては、本質を見極めて対応する必要があるということです。雰囲気に流されて、多額の投資をしても、効果を得られない可能性があります。
今注目集めているDXについても同じことが言えます。DXについて、その定義や意味を説明できる人は、どのくらいいるのでしょうか?多くの人が、改めて問われると、実は、答えられないのではないかと思います。
それも不思議ではありません。何故なら、明確な定義は存在せずに、人によって異なる見解が述べられることがあるからです。
リモートワーク、リモートセールス、AI・データサイエンスの導入など、その個別の要素をDXだと説明する人もいるかもしれないですが、それは、DXに関する報道を何となく見ており、単にそれを口に出しているような状況だったりすると思います。
それ故、DXと言われるもので、何を実現しようとしているのかを冷静に見極めておく必要があります。それが、DXの本質を理解することに繋がります。
DXの目的は、情報技術を使って企業などの組織や人の行動を根本から変容させて、これまでとは次元の違う成果を得ようとすること
私が個人的にDXの目的は何かと質問された場合には、このように答えるでしょう。
コロナ禍によって、DXが急加速したという背景があるので、多くの人は、在宅で出来るリモートワーク、リモートセールスのようなことをDXと思っているかもしれませんが、それは、ごく一部のことです。
従来の古典的な単なる情報システム化も、業務改善レベルのDXともいえるので、全く情報システム化を行っていない組織にとっては、これを行うだけでも大きな効果を見込めるので、これもよいでしょう。このプロセスを飛ばして、いきなりAIの活用のフェーズに飛ぼうとしても、それは難しい話なので、ワンステップずつでよいのだと思います。
逆に、あえてDX化を行わないという選択もあるでしょう。例えば、人に対するサービスを行う場合に、あえてDXとは逆の対面サービスをより追求するという選択肢もありえるでしょう。DXを強く意識で、世の中がDX化に流れていく、その逆方向に向かうことで、提供するサービスをより際立たせようとする戦略です。その上で、それを補完する部分に最低限のDX化を施すのも、立派なDXでしょう。
DXは、あくまで手段であり、目的ではないので、その点を間違えないようにするとよいと思います。