人に仕事を依頼する時には自主性を引き出すことが重要である
社会に出て長いキャリアを積んでくると、部下を持つなどして、他の人に仕事を依頼してより大きな仕事をするようになってくると思います。この場合に勘違いしやすいのは、自分がそのポストに就くことで得られる権威を自分の実力と錯覚して、人に指示命令することを当然のこととして、横柄な振る舞いをしだすことです。
このような振る舞いは非常に大きな勘違いのもとに行われることです。
人に仕事を依頼するのは、役割として行っているだけで、人間的な価値の上下を示すものではありませんので、このような振る舞いは、仕事を依頼される側の人の自主的な行動の芽を摘んでしまうことにつながると思います。最悪の可能性としては、悪意を持って自分の足を引っ張られてしまう可能性もあります。
このような人間の感情を考慮に入れて、結果として、多くの人に自主性を持った活動をして貰えるように仕向けていくことが、強い組織を作ることに繋がってくるのだと思います。自主的な活動がない組織の場合、一から十まで管理者の立場の人が指示しなければ動かない組織ですので、多くの人数がいても、活動の総量、つまり、実行できる仕事の総量としては、非常に少ないものになっていまいます。
従いまして、自主性は企業において非常に重視される要素となります。
管理する立場になる前にしか自主性を引き出すマネジメントを学ぶ経験はない
しかしながら、他の人の自主的な活動を引き出すスキルを持った人というのは、実は、それ程多くありません。私の経験上でも、管理職のポストについていても、そのスキルを持った人というのは、非常に少ない人数しかいませんでした。
その原因を考えてみると、管理する立場に就く前の段階で、つまり、自分に権威がついてこない段階の前に、他の人の自主性を引き出す形で仕事をしているかどうかによって、管理職になった時の振る舞いが決まるのではないかと思います。
一旦管理する立場になってしまいますと、部下の評価権を持ってしまうために、部下が弱みやマイナスのことを見せなくなるために、表面上は、何事もなく物事が進んでいくようになります。仮に横柄な態度をとっていても、部下は悪い評価をつけられないように、何ごともなかったように対処して、物事を進めていくようになります。
つまり、管理する立場になる前にしか、自分の振る舞いの結果、他の人がどのように動くことになるのかを学ぶ機会はないということになります。この点を認識しておくことは非常に重要です。
もっと言いますと、この“権威なきマネジメント”の段階で、自分の振る舞いの結果、マイナスの結果が出て来る経験をして、その結果を改善するという経験を積んでおくことが非常に重要なことになります。もちろん、良い結果が積みあがれば、それは、既に理解していることだと思いますので、大変よいことだと思います。
他の人の支援を行うには“権威なきマネジメント”で得た真の実力が必要です
この“権威なきマネジメント”の能力は、その人の真の実力を表すもので、最高難度のものだと思います。自分の仕事の能力はもちろんのこと、自分以外の人のことを良く理解して、その人が行動できる話し方を選択して動いて貰い、大きな結果に結びつける能力だと思います。
これは、その人の真の意味での実力だと思いますので、会社で言えば、平社員の時点で養成すべき能力だと言えます。
逆に言うと、管理する立場は、その立場につく前に養成した実力を活かして結果を出していくポストだと言えますので、その時点で、管理する立場に必要な考え方を学ぶ姿勢では遅いということになります。
人の支援というのは、支援する対象の人の自主性を引き出して大きくのばしていくことだと思います。つまり、権威的発想に基づく「管理」では難しいと思いますので、権威なきマネジメントを行うために必要な考え方でしか行うことが出来ないものだと思います。